第446回定期演奏会 2024年11月27日(水) 広島文化学園HBGホール

第446回定期演奏会 2024年11月27日(水) 広島文化学園HBGホール 18:45開演

指揮:クリスティアン・アルミンク
ピアノ:ゲルハルト・オピッツ
広島交響楽団

ブラームス:ピアノ協奏曲第2番変ロ長調作品83
マルティヌー:交響曲第6番 H.343「交響的幻想曲」


11月27日の広島交響楽団第446回定期演奏会、マルティヌーの名演に心奪われました。
リハーサルでマエストロが指摘していたPiu Allegroからのリズミックな箇所と、Poco Menoからの柔らかな音色の対比は素晴らしかった。
1楽章の北田さんのヴァイオリン・ソロ、完璧でした。最大限の賛辞を心から捧げます。

2楽章、ヴィオラの主題から始まりチェロが絡んだ後2ndヴァイオリンとヴィオラが内声を、1stヴァイオリンとチェロが一緒にメロディーを奏で、曲の進行とともに別のメロディーに分離していく箇所は本当に美しく、鳥肌もの。マエストロが設定した落ち着いたテンポだと、美しさが際立ちます。
トロンボーンのコラール後にpで奏でる弦のリズムも明確で、実に素晴らしかった!
アインザッツを揃えにくい箇所が頻発するので、1楽章からマエストロはそれはそれは丁寧に合図を出していました。それだけに、2楽章の某パートの飛び出しが本当に惜しかったです。本当に、些末なことですが・・・。
言い換えれば、それ以外はパーフェクト(だったと思います)。

3楽章冒頭トゥッティのコントラバスの絶妙の間合い、オケのサウンドは最高。チェロに始まる叙情的な旋律の美しさ!Poco vivo前でコントラバスがfで楔のように打ち込む力強い響き、素晴らしかったです。
ヴィオラ、チェロの大活躍は言うまでもなく、2ndヴァイオリンの内声の動きも明瞭で素晴らしかった。コントラバスも太い音でがっちりとオケを支えていて、最高でした。

フルート、オーボエ、クラリネット、ファゴットの見せ場多数で、いずれもブラヴォー。特にファゴットのソロは本当に素晴らしかったです。ブラヴィッシモ!
トランペット、ホルンは全体のサウンドに調和しながらも、アクセントとなる箇所はきっちりと決めていて全体が引き締まりました。トロンボーンのコラールの美しさ、チューバの安定感も素晴らしかったです。
マエストロの明確な棒に応え、いずれのパートも誠意を込めて演奏している様が会場に伝わってきました。
ハンガリー舞曲1番をアンコールで演奏したからか、パートごとの立礼がなかったのは少々残念でしたが、皆さん本当に素晴らしかったです。

初演者ミュンシュとボストン響の鮮烈(強烈?)な演奏は一つの極点でしょうが、多様な演奏スタイルを許容する名曲だと改めて実感。
洗練と熱気を同居させつつ粗野な響きにならないスタイルは、マエストロ・アルミンクの素晴らしさだと思いました。
4月の「タラス・ブーリバ」も素晴らしかったですし、ヤナーチェク、マルティヌーに対するマエストロの強い思いを感じました。
マエストロ在任中に、ピエロ・デッラ・フランチェスカのフレスコ画、オラトリオ「ギルガメッシュ」などを是非とも聴いてみたいです!

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シン・ディスカバリー・シリーズ 《ふたりのヴォルフガング Mozart & Korngold》 第3回

シン・ディスカバリー・シリーズ 《ふたりのヴォルフガング Mozart & Korngold》 第3回
2024年11月22日(金) 18:45開演 JMSアステールプラザ大ホール

指揮:クリスティアン・アルミンク
ピアノ:五十嵐薫子
広島交響楽団

コルンゴルト:交響組曲「ロビンフッドの冒険」
コルンゴルト:左手のためのピアノ協奏曲嬰ハ調作品17
モーツァルト:交響曲第39番変ホ長調 K.543


広響の今回のディスカバリーシリーズ、出演予定だった萩原麻未さんの体調不良によりキャンセルなさりました。これからの日々、どうぞお健やかにお過ごしください。
そして、急遽の出演をお引き受けになった五十嵐薫子さんに心からの敬意を捧げます。

「ロビンフッドの冒険」はコルンゴルトの面目躍如の佳曲。
オーケストレーションは手が込んでいながらも、一聴して分かりやすく華やかな曲に仕上げる技は、さすがコルンゴルト。
TpとHr、ブラボー!今日のメンバー表を確認すると、都響の岸上さん。
Tpは我らが金井さん。素晴らしい!

今日のマエストロの解説、実は今夜の白眉ではないでしょうか。
アンシュルス直前のウィーンを離れるきっかけとなったのが、今日の一曲目の「ロビンフッドの冒険」作曲に繋がるのエピソード。感慨深いものがありました。
次回のコンサートでのマエストロの解説も、楽しみにしています。

個人的な今夜のメインは、左手のためのピアノ協奏曲。
冒頭から複雑なリズムを正確に決めてくるピアノに脱帽です。オケとの複雑な絡みもパーフェクト。微細な楽器の使い方を目の当たりにして、なる程と納得する箇所多数。マエストロをして「選曲を後悔した」と言わしめた理由が分かりました。これは難曲です。
話しはそれますが、ヴィトゲンシュタインはラヴェルの「左手」を勝手に改編して弾いたり、プロコフィエフの4番を弾かなかったのはテクニックに難があったからと言われたりすることがありますが、この曲は気に入って弾いていたようなので、単なる「技術不足」という訳ではないのかも。余談でした。
「左手」、調を揺蕩うように推移する中間部での短いカデンツァが絶美。
コーダから畳み掛けるように終結する箇所でのオーケストラとの掛け合い、もっと響きの良いホールで聴きたかった!!
この難曲を見事に弾き切った五十嵐さんと、全力で協演した広響、マエストロに心からの拍手喝采を!!

休憩を挟んで、モーツァルトK.543。
10型。2分の2を意識したアダージョの序奏の後のホルンの素晴らしいアンサンブルに耳を惹かれます。やはりホルンが上手いとこの曲は映えますね。
微妙なニュアンスに富んだ演奏、全てのパートにブラヴォーを。

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2024.11.17(日) オーケストラ福山定期第4回 (福山リーデンローズ大ホール)

2024年11月17日(日) 16時00分開演 福山リーデンローズ大ホール

鈴木 雅明(指揮)
ジョシュア・ブラウン(ヴァイオリン)※
京都市交響楽団(管弦楽)

モーツァルト:歌劇「ドン・ジョヴァンニ」序曲
ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲ニ長調 Op.61※
ドヴォルザーク:交響曲第6番ニ長調Op.60

 

オーケストラ福山定期第4回、今日も京響は実に素晴らしかった!

ドン・ジョヴァンニでは引き締まった響きが好印象。

ベートーヴェンのVn協奏曲は、表情豊かなジョシュア・ブラウンの独奏が最高でした。
ソット・ヴォーチェのニュアンスに痺れます。ベートーヴェンの長調の素晴らしさを心から堪能。
ソロに寄り添うオケも素晴らしい。ホルン、ブラヴォー!
僕らの世代だとジョシュアといえばベルでしたが、新しい世代のブラウンの素晴らしさを銘記。今夜はこの協奏曲を聴けただけでも大満足と、前半終了。

休憩後のドヴォルザーク6番は、何と生命力溢れる名演!京響と鈴木先生の紡ぎ出す音楽に圧倒されっぱなし。こちらもホルン隊、ブラヴィー!
鈴木先生の指揮はフレーズの処理が実に明確で、多声部を実に魅力的に聴かせてくれます。これはバッハの演奏で磨き上げたものなのでしょうか。
6番の実演は初めてでしたが、こんな素晴らしい演奏に接する事ができ、本当に幸せ。

ホールの美しい響きも、今日の演奏の立役者の一人なんでしょうね。広島市に連れて帰りたい。

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2024.11.03 音楽の花束 広島交響楽団 (広島国際会議場大ホール)

2024年11月3日(日・祝)  広島国際会議場フェニックスホール 15:00開演

指揮:徳永二男
ヴァイオリン:前田妃奈*
ハープ:早川りさこ*
ナビゲーター:假屋崎省吾

ベートーヴェン:「コリオラン」序曲作品62
ブルッフ:スコットランド幻想曲作品46*
ベートーヴェン:交響曲第5番ハ短調作品67「運命」

 

2022年に関西フィルとのブラームスのヴァイオリン協奏曲を聴いて前田妃奈さんのヴァイオリンに魅了され、本日の演奏会で前田さんの演奏を聴くことができることを楽しみにしていました。
ブラームスの時は骨太で力強い表現が印象的でしたが、今日のスコットランド幻想曲では細やかなニュアンスに満ちたヴァイオリンが実に素晴らしかった。

ベートーヴェンでは、コントラバスの厚い音がオーケストラ全体のサウンドを支え、大変充実した響きに感銘を受けました。
最近は歴史的知識に基づく演奏に接する機会が多い「運命」ですが、本日の演奏のようなモダンな演奏もやはりいいものだと改めて実感しました。
徳永先生のヴァイオリン独奏をアンコールで聴くことができ、幸せなひとときを過ごすことができました。

ブルッフの協奏曲をプログラムに据え、ベートーヴェン、ブラームス、ブルックナーの有名曲を聴くことができる今年の音楽の花束シリーズのプログラム構成は、本当に素晴らしい。
ブルッフの二重協奏曲で広響の首席の素晴らしい独奏を聴くことができたのも、とても嬉しかったです。

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2024.10.11(金) 広島交響楽団第445回定期演奏会(広島HBGホール)

2024年10月11日(金) 18:45開演 広島文化学園HBGホール

指揮:準・メルクル
ヴァイオリン:ポール・ホアン

リヒャルト・シュトラウス(生誕160年):ヴァイオリン協奏曲ニ短調作品8
ブルックナー(生誕200周年):交響曲第9番ニ短調 WAB 109(ノーヴァク版)

 

10月11日に没したブルックナーの命日に開催された、広島交響楽団第445回定期演奏会。天国のブルックナーへの素晴らしいささげ物となる演奏会でした。
1824年生まれのブルックナー生誕200年の記念の年、ブルックナーを聴く機会が多かったですが、自分はこの演奏会が最後のブルックナー。

前プログラムは、R.シュトラウスのヴァイオリン協奏曲。緻密でよく響くオーケストラの扱いが素晴らしい若書きの佳曲、栴檀は双葉より芳しとはまさにこのこと。
ホアンさんのヴァイオリンに瞠目しました。音程は正確で、抜群のテクニック!予習でいくつかの録音を聴いていましたが、この演奏が抜群でした。冒頭から気合いの入った広響も最高。
終演後、ホアンさんのサイン会で今日の素晴らしい演奏に感銘を受けたことをお伝えできて、良かったです。

ブルックナー9番、オケに伝えようとするマエストロの確たるヴィジョンが客席にも伝わってきて終始圧倒され、弛緩する瞬間はひと時もなし。
ヴァイオリンのプルト内の席の配置がいつもと違っていたのが奏功したのか、四方さんから後席まで一体感があり素晴らしいサウンド。ヴァイオリンからコントラバスまで、いつもと音圧が違いましたが、これは一体なぜなのか。

この演奏を、リーデンローズで聴きたかった!定期は、広島と福山で毎回開催しませんか?

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2024.09.27 広島交響楽団 ディスカバリーシリーズ 「ふたりのヴォルフガング」第2回 (アステールプラザ大ホール)

2024年9月27日(金) 18:45開演 JMSアステールプラザ大ホール
指揮:クリスティアン・アルミンク
オーボエ:板谷由起子
クラリネット:品川秀世
ホルン:小田原瑞輝
ファゴット:門田奈々
チェロ:マーティン・スタンツェライト

モーツァルト:歌劇「コジ・ファン・トゥッテ」序曲
モーツァルト:管楽器のための協奏交響曲変ホ長調 K.297b
コルンゴルト:チェロ協奏曲ハ調作品37
コルンゴルト:「シー・ホーク」組曲

こちらに住んでいるとなかなかコルンゴルトを聴く機会がないので、広響の今年のディスカバリーシリーズ「ふたりのヴォルフガング」は嬉しい限り。
第1回目は所要で伺えなかったので、今回が初。

一人目のヴォルフガング、モーツァルトはK.588序曲とK.297b。K297bの自筆譜がない問題はさておき、管楽器奏者の妙技を味わうことができる佳曲。
K.297bでは、広響が誇る板谷さん、品川さん、門田さん、小田原さん4人の首席奏者の皆さんの演奏を堪能。
最後のアンコールでのK.622の2楽章での品川さんのしっとりとした音色と歌いまわし、絶品。

二人目のヴォルフガング、コルンゴルトはチェロ協奏曲とシーホーク組曲。
マーティンさんのソロ、音楽が進むにつれて伸び伸びと響くチェロが素晴らしい!コンパクトだが、甘いメロディーと巧みなオーケストレーションが施された協奏曲は、これぞコルンゴルト!
シーホーク組曲、冒頭から鳴りっぷりのよいオーケストラの音に身を委ねれば、コルンゴルトの世界にどっぷりと。こうして様々なコルンゴルトの作品に触れる機会を作ってくださったアルミンク監督、広響の皆さんに心からの感謝を!

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2024.08.25(日) ひろしまオペラルネッサンス プッチーニ:歌劇《修道女アンジェリカ》 歌劇《ジャンニ・スキッキ》

2024.08.25(日) ひろしまオペラルネッサンス アステールプラザ 14時開演


ジャコモ・プッチーニ:歌劇《修道女アンジェリカ》全1幕
〈原語(イタリア語)上演/日本語字幕付〉

ジャコモ・プッチーニ:歌劇《ジャンニ・スキッキ》全1幕
〈原語(イタリア語)上演/日本語字幕付〉

芸術監督・演出:岩田達宗
指揮:川瀬賢太郎
管弦楽:広島交響楽団
合唱:ひろしまオペラルネッサンス合唱団、NHK広島児童合唱団

《修道女アンジェリカ》
アンジェリカ:田坂蘭子
公爵夫人:八木寿子
女子修道院長:大賀真理子
修道女長:森園あや
修練長:新家華織
修道女ジェノヴィエッファ:川手響
修道女オズミーナ:中野綾
修道女ドルチーナ:荒尾公美子
医務係の修道女:山下裕子
托鉢係の修道女A:網永悠里
托鉢係の修道女B:須藤歩希
修練女:小坂有理亜
助修女A:本村聡子
助修女B:吉川秋穂
修道女:大城薫、片山孝恵、久保幸代、重本ゆうき、平岩蘭、藤原晴珠、山持真美

《ジャンニ・スキッキ》
ジャンニ・スキッキ:安東玄人
ラウレッタ:原田幸子
ズィータ:佐々木有紀
リヌッチョ:中島康博
ゲラルド:難波孝
ネッラ:柳清美
ゲラルディーノ:重本ゆうき
ベット:飯塚学
シモーネ:安田旺司
マルコ:山本徹也
ラ・チェスカ:浦池佑佳
スピネッロッチョ:山岸玲音
アマンティオ:山岸玲音
ピネッリーノ:一大輔
グッチョ:森本誠

「ジャンニ・スキッキ」、「修道女アンジェリカ」ともに、舞台背景はベックリンの「死の島」がモチーフ。
演出の岩田さん曰く、「死者の記憶を守り、悼み、祈るために描かれた名画が、現代の広島で舞台上によみがえる。79年前にここで亡くなった方々を忘れないでほしい、同時に、新しい人が広島に集まってほしいという願いを込めている。舞台を通じ、大切な人のことを思い出してほしい。」(中国新聞8月16日WEB版)。

開幕前に出演者が舞台設営を始める趣向は、一興。特に、ジャンニ・スキッキではリヌッチョが一人舞台に残って継ぎ目なく始まり、こうした演出もありだと思った。

会場はアステールプラザ大ホール。ここは響きが非常にデッドで、以前に2階席最前列でディスカバリーシリーズを聴いた時は、音の響きが期待したものよりも薄かったこともあり、音を堪能するためにはできるだけ前方席が良いのではと判断。
前から5列目の席を確保して、実際に席についみると少々舞台に近すぎたかもと思ったが、正解。声、オケともに明瞭で音量も問題なし。
バランスの悪さを危惧したけれど、声とオケのバランスは良好に感じた。

川瀬マエストロの指揮は、細やかで明瞭。ヴェリズモ系との親和性が高いかも。コンサートでもオペラでも、また、聴いてみたいと思った指揮者。
広響は充実した響き。深いオケピットは、声とのバランスをとった結果なのか。

歌手では、ジャンニ・スキッキ、アンジェリカともにブラヴォー。外題役以外も、ラウレッタ、リヌッチョ、公爵夫人、ジェノヴィエッファ、オズミーナ、ドルチーナにも賛辞を。

「修道女アンジェリカ」、自死の決心から救済までは、もう少し演出がセリフを補って心の揺れを表現できていたら良かったかも。歌唱は素晴らしい。カーテンコール前、アンジェリカと幼子が並んで立っている姿に、2人の魂の救済を見る。

20分休憩。ロビーでは、オペラの舞台となったイタリアのワインが提供されていた。ノン・アルコールのスパークリングワインがあり、車での来場者にとっては嬉しい一杯。

「ジャンニ・スキッキ」では、字幕の一部が広島弁。自分は、肯定的に受け止める。
幕切れ前、演者が集まり、ジャンニ・スキッキが会場に問いかけるシーンは、良いアイデア。あえてフライング拍手を誘い、それがいい雰囲気に。
場を和ませるためのアドリブ的なシーンがあったけれど、少々品がなかったかも。そんなことをしなくても、客席は十分に温まっていたと感じた。

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2024.09.04(水) 広島交響楽団第444回定期演奏会(広島HBGホール)

開店休業状態の我がブログ。
コンサートの備忘として、9月4日に開催された広島交響楽団第444回定期演奏会から記録をつけてみる。

その後、適当に時間を遡って記事を投稿する予定。予定は未定、どこまで遡れるか。また、いつまで続くか。

 

2024.09.04(水) 広島交響楽団 HBGホール 18時45分開演
指揮:ヘンリク・シェーファー
ソプラノ:隠岐彩夏
メゾ・ソプラノ:加納悦子
テノール:ペーター・ローデル
バリトン:ユーリ・ハゼスキー
合唱:東京オペラシンガーズ

シェーンベルク(生誕150周年):「浄められた夜」 作品4
ブルックナー(生誕200周年):ミサ曲第3番ヘ短調 WAB 28

シェーンベルクでは、下手から1stヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、2ndヴァイオリンと並び、その後方にコントラバスが一列。
この並びのためなのか、低弦の音の厚みがいつも以上に感じられた。
「浄められた夜」は細やかにサウンドを重ねながら、大きなストーリーを紡ぎだす演奏。繊細な弱音とトゥッティのマッシヴなサウンドのコントラスト、素晴らしい。指揮も明確で、音楽が向かう先が迷子にならず、安心して音楽に集中できた。
ただし、客席内では電子音が何度も。斜め後ろの席ではメッセージ着信音、録音開始・終了と思しき音。遠くでは電話着信音も。一体どうなっているんだ。

ブルックナーの生誕200年記念の年、9月4日の誕生日にシェーファーの指揮でミサ曲第3番、10月11日の命日に準・メルクルの指揮で、9番。選曲者のセンスに、脱帽。いずれの前プロも、シェーンベルク、R.シュトラウスと、よくよく考えられた素晴らしい選曲。

本日の合唱は、東京オペラシンガーズ。8月6日の「復活」でも素晴らしい合唱だったが、自分たちが本日の主役の一人であると自覚した入魂の歌唱、圧倒されるばかり。
プロ歌手の合唱団の底力に、ただただ恐れ入った1時間。
ピアノが瘦せることなく、フォルテが荒れることなく、響きの質と音量の変化のマトリクスの中に様々な声を配置していく技術に驚嘆。

ソロは、女性二人に心からの賛辞を。芯のあるクリアな隠岐さんの声は、いつ聴いても素晴らしい。加納さんの声を聴き、大阪での素晴らしいヘロディアスの歌唱を思い出した。
女性に比べると、男性のコンディションにはいささかの疑問符が。特に、テノールはどうしたのだろう。美しくよく響く声なのに。

ミサ曲での四方さん、安保さんのソロはお見事。縦が少しずれ気味でヒヤリとする瞬間もあったけれど、リハとはテンポが違った?

こうした曲での、ホルンの山岸さんと渡辺さんのコンビは、本当に良い。
九響の高井さんを迎え、余裕をもって朗々と吹奏するトロンボーンパート、実に素晴らしい。

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2024「平和の夕べ」コンサート 2024年8月6日(火) 18:45開演(17:45開場) 広島文化学園HBGホール

マーラー 交響曲第2番「復活」

指揮:クリスティアン・アルミンク
ソプラノ:並河寿美
メゾ・ソプラノ:藤村実穂子
合唱:東京オペラシンガーズ

 

入魂の演奏。「復活」一曲のみ。

デフォルメを避けつつ、丁寧に造形を重ねて堂々たる音楽を築く。
生演奏につきものの傷は会場で聴いている限りでは気にならず、高い完成度に驚愕。
2年前の平和の夕べでのマーラーの交響曲第3番とは、全く別人のような指揮ぶりに接し、ようやくアルミンクに対する印象を上書きすることができた。

コントラバス首席として髙本さんが入団されてから、低弦の音に力感と瞬発力が増し、オーケストラの音に厚みが加わったように思う。もちろん、ここ数年で広響に加入された池田さん、三上さんの貢献を言うまでもなし。

ご一緒した方も仰っていたが、2楽章のアンダンテ・モデラートの上品な演奏は絶品。3楽章のスケルツォでも、あえて軋みをことさらに強調することなく音楽が形作られていて、こうした演奏のあり様は肯定的に受け止める。

4楽章の原光。藤村さんの深い声が会場に響く。デッドなHBGホールに合わせた歌い方で瞬時に対応されているのだろうか。本当に素晴らしい。
静謐な中で藤村さんの歌唱に耳を傾ける人々の気持ちを逆なでするように携帯電話の着信音が、今年も鳴る。残念の極み。2年前、マーラー3番の4楽章の藤村さんが静かに歌い出す、まさにその瞬間に着信音が鳴った悪夢が、この夜も再び繰り返される。狙ってるの?猛省を求める。

5楽章、合唱の入る瞬間、世界が変わる。何なんだ、この声は。
9月のブルックナーミサ曲第3番の演奏会は、絶対に聴かなければ。
オーケストラ共々に大きなクライマックスを築き、終結。
本日も、ローブラスの安定度は光っていた。チューバの古本さんは、いつもの太く安定した音程。それだけに、ほんの数か所音が外れてしまったのは実に惜しい。ブルックナーといい、マーラーといい、難物だということを実感する。

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第31回島根定期演奏会 2024年4月27日(土) 14:00開演 松江市総合文化センター プラバホール

指揮:クリスティアン・アルミンク
チェロ:横坂源
オルガン:室住素子

J.S.バッハ:トッカータとフーガ ニ短調
J.S.バッハ:主よ、人の望みの喜びよ

ドヴォルザーク(没後120年):序曲「謝肉祭」作品92
ドヴォルザーク:チェロ協奏曲ロ短調作品104(B.191)
ヤナーチェク(生誕170年):狂詩曲「タラス・ブーリバ」*

第31回島根定期は、ドヴォルザークの「謝肉祭」とチェロ協奏曲、ヤナーチェクの狂詩曲「タラス・ブーリバ」というチェコ特集。個人的な注目曲は、何と言っても「タラス・ブーリバ」!

2024年プログラムが発表されたときから、個人的には目玉となる演奏会の一つでした。発売日初日に希望の席を押さえて、この日を指折り数えて待っていたコンサート。
様々な指揮者が録音しているものの、演奏頻度は全国的にもそれほど高くないこの曲を、こうして取り上げてくれる広響に深甚なる感謝を。

アルミンクさんの「タラス・ブーリバ」といえば、若かりし頃にヤナーチェク管弦楽団を指揮したヤナーチェクアルバム。
CDでしか聴いたことがなかったアルミンクさんが指揮する「タラス・ブーリバ」を聴くことができるのなら、しかも演奏するオーケストラが広響となれば、我が家から片道3時間の距離もなんのその。

演奏は期待に違わぬ素晴らしさ。ヤナーチェク独特の和声感、リズム感を生で体感できる幸せよ。プラバホールで聴くオルガンは壮麗で、終曲を力強く盛り上げる。
演奏会後、楽屋口でマエストロのヤナーチェクのCDにサインを頂戴し、恐悦至極。ご自身の若かりし姿のジャケットに受けていらっしゃいました。

狂詩曲「タラス・ブーリバ」は19世紀にゴーゴリが著した物語に基づくものですが、その舞台となるのは16~17世紀の現在のウクライナ。ゴーゴリの物語はポーランド・リトアニア王国との関係を踏まえたもの。
当時の地域間の力関係を知り、作品理解の一助とすべく山川出版の世界各国史の「ポーランド・ウクライナ・バルト史」を入手。
ポーランド生まれとされるシマノフスキの生地は現在のウクライナであることも、本書を読めばその歴史的経緯を理解することができる。

演奏の順番は前後するが、横坂さんのチェロは熱を帯びつつも端正な表情が印象的。ドヴォルザークのチェロ協奏曲を演奏会で聴くのは、誰以来だろう。

久しぶりの松江訪問。せっかくの機会なので、大学の同級生M君に案内してもらい、出雲そばを堪能。その後、色々と忙しい中で松江城、宍道湖も連れて行ってもらう。
本当に、ありがとうございました。また、皆で会いましょう。

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