リヒャルト・シュトラウス 歌劇「ばらの騎士」 ウィーン国立歌劇場 2025年10月26日

リヒャルト・シュトラウス 音楽のための三幕の喜劇  ばらの騎士
指揮:フィリップ・ジョルダン
演出:オットー・シェンク
元帥夫人:カミラ・ニールント
オックス男爵:ピーター・ローズ
オクタヴィアン:サマンサ・ハンキー
ゾフィー:カタリナ・コンラディ
ファーニナル:アドリアン・エレート
管弦楽:ウィーン国立歌劇場管弦楽団(コンサートマスタ:ライナー・ホーネック)
合唱:ウィーン国立歌劇場合唱団
東京文化会館
2025年10月26日

10月26日は、上野の東京文化会館でウィーン国立歌劇場の「ばらの騎士」。この度の来日公演の千秋楽でした。

開演1時間以上前ですが、ロビーは大勢の人。立派なプログラムを購入し、本日の3階の席(1列3)を確認してゆっくりと開演を待ちました。
自分も含めて少々高揚した雰囲気の観客で、 ホール内は満席。
この日の上演を体験をできたことは、本当に幸せでした
自分の言葉では、言った端から自分の観たもの、聴いたものからかけ離れてしまい、書いては消すことの繰り返し。
もう開き直って、印象を脈略なく書き綴るだけです。

まずは、オーケストラ
大変な難曲でありながら、その難しさを聴き手に全く感じさせることなく、非常に高い水準を1幕冒頭から3幕の終わりまで維持したことに驚愕し、人がこれほど高度な技量を発揮しうるのかと畏怖すら覚えます。

次に、演出
オペラ上演における演出の意義を、登場人物間の関係性とその変化を可視化することによって、ドラマの構造を実体化させることにあるとすれば、シェンクの演出は極点の一つとして燦然と輝く演出だと思います。
古い、新しいという視点でこの演出を語ることは、演出に関する議論としてはいかがなものでしょうか。

もちろん、歌手
繊細でニュアンスに富んだニールントの歌唱による元帥夫人、青年貴族としての凛とした雰囲気と10代後半特有の「青さ」を見事に表現したハンキーのオクタヴィアン、コンラディの唯々諾々を親の言うことに従わない「おきゃん」な育ちの良い町娘としてのゾフィー、3人の女声は本当に素晴らしい。
世評高いローズのオックスは、多くの人がオックスに重ねるイメージそのもののような人物造形に感心しました。
ファーニナル、マリアンネ、ヴァルザッキ、アンニーナもいずれもドラマの中で大切な役割を果たしていました。ヴラヴィ!

そして、指揮者
ジョルダンの導いた音楽は、本当に素晴らしいものでした。
大げさな身振りではなくとも、これだけ音楽に様々な彩りを添えることができる指揮者は稀有な存在だと思います。
1994年の伝説と比較されてしまうとは思うし、その伝説に立ち会った人はその幸せを一生大切にすべきとは思いますが、この日の上演の輝きは間違いなく本物だったと確信しています。

 

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広島交響楽団 第455回定期演奏会 2025年10月24日 広島文化学園HBGホール

指揮:クリスティアン・アルミンク
チェロ:スティーヴン・イッサーリス

細川俊夫:《森のなかで》室内オーケストラのための(日本初演)
ドヴォルザーク:チェロ協奏曲ロ短調作品104
マルティヌー:交響曲第5番 H.310

広響がマルティヌーの交響曲第5番を演奏しましたが、5番が日本で演奏されるのは東京都響とフルシャの演奏以来ではないでしょうか。
いずれにしても、大変貴重な演奏会。国際マルティヌー協会日本支部の代表の方も広島にお越しでした。その他にも、チェコにゆかりのある音楽家もお越しだったようで、注目のほどが伺われます。

コンポーザー・イン・レジデンスの細川さんの作品は、ステージ外にも奏者を配した立体的な音響。音楽作品における鳥の声の引用も聞かれ、コンサートの幕開けに相応しい佳作でした。
当日は細川さんも臨席されていました。

続いて、イッサーリス独奏でドヴォルザークのチェロ協奏曲。
音量で圧倒するわけではないので、イッサーリスの繊細な音を楽しむためにはもう少し前の席でも良かったかも。
とはいいながら、耳が慣れてくるとイッサーリスと広響の音の交歓が心地よく、クライマックスに向けての高揚もさすがでした。

休憩を挟んで、マルティヌー。5番が演奏されることが分かってから、ずっとこの日を楽しみにしていました。
期待に違わない実に明瞭な演奏、リズムが複雑に絡み合うこの曲をこれほど立体的に響かせることができるのは、下野さんの頃から取り組んでいたチクルスでの演奏実績、モラヴィアのオーケストラの音楽監督だったアルミンクさんの深い洞察によるものだったと拝察します。
フライング気味のブラヴォーも、気持ちが分からなくもない。それくらい、聴衆を興奮させる曲だし、演奏でした。
これを機に、もっとマルティヌーが日本でも広く演奏されますよう祈念いたします。

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ブリテン 歌劇「夏の夜の夢」 2025セイジ・オザワ松本フェスティバル

2025年8月24日(日)まつもと市民芸術館にて 開演15時、終演18時10分

指揮:沖澤のどか
演出・装置・衣裳:ロラン・ペリー
装置補:マッシモ・トロンカネッティ

衣裳補:ジャン=ジャック・デルモット
照明:ミシェル・ル・ボーニュ

<キャスト>    
オーベロン:ニルス・ヴァンダラー
タイターニア:シドニー・マンカソーラ
パック:フェイス・プレンダーガスト
シーシアス:ディングル・ヤンデル
ヒポリタ:クレア・プレスランド
ライサンダー:デイヴィッド・ポルティーヨ
ディミートリアス:サミュエル・デール・ジョンソン
ハーミア:ニーナ・ヴァン・エッセン
ヘレナ:ルイーズ・クメニー
ボトム:デイヴィッド・アイルランド
クインス:バーナビー・レア
フルート:グレン・カニンガム
スナッグ:パトリック・グェッティ
スナウト:アレスデア・エリオット
スターヴリング:アレックス・オッターバーン

児童合唱:OMF児童合唱団
演奏:サイトウ・キネン・オーケストラ

 

大変素晴らしい演奏に感銘を受けました。今までの音楽体験の中でも、随一。
悪文駄文の見本のようなものですが、生涯忘れ得ぬ体験をした一日の備忘録として、以下につらつらと。

非常に暑い一日。

14時開場を前に、松本城北の「やまとう」にて食事。
開店前からお客さんが並ぶとのことだったので開店前の10時55分頃に到着したものの、すでに数組の開店待ち。自分たちの番号札は6番。
11時15分頃には入店でき、おすすめの「色とりどりコース」を食す。
この日の変わりそばはケシの実入りのそば。最後のだったんそばのプリンまで、大変美味しく頂く。あまりの暑さに負けて、生ビールを一杯。

14時開場まで時間があるので、AEON松本で涼を取る。事なきを得たので、入店直後のちょっとしたハプニングも、いい思い出。当の本人は、それどころではなかったとは思いますが・・・。
店内のスターバックスで冷たいコーヒーで体を冷やそうと思うものの、炎天下で熱せられた体を冷却するには力不足。汗で濡れたハンカチを手洗いで洗って、快適性をほんの少しだけ回復させる。
店内の書店に移動し、引き続き涼を取る。近藤史恵のシャルロットシリーズを買い、犬好きの娘にその場で進呈。

AEONからは徒歩5分程度でまつもと市民芸術館に到着。
開場まで少し時間があったので、前年の写真パネルやショップの品々を見て回り、公式プログラムを1部購入、2,000円。
年輩の方が目立つ、かな。自分を含めて男性の装いは総じてラフ、女性はおしゃれだったように思う。

14時開場、1階のホワイエでワインの振る舞いがあったが、すでにビールで燃料補給済みなので自重。
ピットではコンマスの矢部さんが練習中。ピット上手側から歩いて近づくと、矢部さんと目があうが、きっと誰かと勘違いなさっていたものと思われる。ただ、せっかくの機会なのでお話させてもらっても良かったかも。とっさの判断力が劣る自分を呪う。
ピット内に多数のマイク、会場隅の目立たないところに数台のカメラ。後日、どのような形で視聴できるのか楽しみ。

1階、2階を見た後に3階の自席に到着。想像した以上にステージが近く、安堵。ピット、舞台ともによく見え、自分にとっては良席。
会場内をそぞろ歩くと、あちらこちらで音楽界の著名な方々が大勢。さすが、世界のOMF。
ピット内は、下手から上手に向かってチェレスタ、チェンバロ、ハープ(吉野さん!)、木管群、2ndヴァイオリンが客席側、1stヴァイオリンが舞台側、センター客席側にコントラバス、その手前にチェロ、ヴィオラ、ホルン、トランペット、トロンボーン、打楽器群)とピットの中ならではの配置。

開幕、舞台にはベッドとそこに眠るハーミア。森の中でストーリーが進行するわけではないらしい。
3幕最終場面ではベッドには再びハーミアが。これは、ハーミアが見たひと夏の夜の幻想なのか。

オーケストラ冒頭のグリッサンドが幻想的に、そして明瞭に聞こえてくる。個々の奏者の力とリハーサルでの準備が入念に行われた賜物か。
暗い舞台に妖精たちの幻想的な光。フォーメーションが美しく、合唱が実に素晴らしい。ソロパートも含めて、屈指の名唱では。

オーベロン、タイターニア、パックが宙を舞う。
不安定な状態でもしっかりとした声が3階席にも届くのは立派。
ニルス・ヴァンダラーの力強くも美しいカウンターテノールは、タイターニアとの対比の上でも、まさに役にうってつけ。
シドニー・マンカソーラはリリカルな美声で、このあとの場面でのコロラトゥーラも素晴らしかった。

寝間着姿のハーミアとライサンダーが登場し、二重唱。ニーナ・ヴァン・エッセンのリリカルで高低でムラのない響き、デイヴィッド・ポルティーヨの伸びやかなテノールが素晴らしい。

その後、ディミートリアスとヘレナ。サミュエル・デール・ジョンソンのよく響く美しいバリトンに驚愕。このディミートリアス役のバリトンは凄いねと 、幕間に娘とも語らう。 ヘレナ役のルイーズ・クメニーも余裕がありながらも無理ない響き。

ボトムのデイヴィッド・アイルランドは芝居も達者で、劇中「アテネでピラマスを演じられるのはボトムだけだよ」とのセリフがあるが、「松本でボトムを演じられるのはアイルランドだけだよ」と言ってもいいくらい、はまり役。
他の職人たちも、誰一人として弱いパートなし。クインス(バーナビー・レアの小芝居が光る!)はもちろん、スナグ(パトリック・グェッティの見事な最低音の響き!)に至るまで役に合った素晴らしい歌唱。実に「キャラ」が立っていて、生き生きとした場面は出色。
声部が複雑に絡み合う場面でも、難なくアンサンブルを仕上げる歌手とオーケストラに舌を巻く。これが、世界水準の演奏なのか。

人間界、妖精界によって月の色が変わり、シンプルながらも舞台装置が非常に効果的に機能。鏡の位置を巧みに移動させた演出は見事だったが、鏡を斜めに置いた3幕の職人たちの御前芝居は抱腹。会場の観客も鏡に写っていて、視線が多重的に絡み合う面白い場面。
最終盤に鏡がせり出してきて、観客が鏡に大きく映し出され、歌手たちが一斉にこちらに向かって歌い出した瞬間に、観客も物語の中で一緒に夏の夜の夢を彷徨っていたかのような不思議な感覚に。オペラを見ていた観客の眼差しと、眼指されていた舞台の視点の鮮やかな交代に、感服至極。

幕切のオーベロンとタイターニアの二重唱、目の前のテラス席で歌っている!
1階の方は、舞台では妖精たちの合唱、天上から二人の二重唱と立体的なサウンドを堪能されたのですね。
でも、自分たちは目の前でオーベロンの歌を聴けたんだもの、羨ましくなんかないもん(強がり)

矢部さんのヴァイオリンのソロは優美でミステリアス。
トランペットの高橋さんはピッコロとC管(?)を持ち替えながら、鮮やかなソロ。個人立礼があれば、真っ先に称えられて然るべき名演。
ホルンの安定したアンサンブルは本当に素晴らしかった。勝俣さんが名手なのは言わずもがな、寡聞にして存じ上げないナタリー・ブルック・ヒギンズさんは、大変な名手!己の不明を恥じ入るばかり。
新田さんのトロンボーンも、実に素晴らしいサウンド。日本のトロンボーンプレーヤーの至宝の一人だから、当たり前ではあるけれど。
無論、木管、弦楽ともにいずれも技術的に高く緻密な演奏に、心底感心する。繰り返しになるけれど、この日の演奏は世界でも屈指の高水準だったことは間違いなし。

この舞台を作り上げたのは、演出家、指揮者、歌手、合唱、オーケストラだけではなく、パック、オーベロンやタイターニアを縦横無尽に飛び回らせた舞台装置の方々の貢献も忘れてはならない。カーテンコールで黒衣に身を包んだ皆さんが拍手を受けている場面は、見ているこちらも胸が熱くなる瞬間。もちろん、それ以外にも多くの方々のご尽力あってのステージ。関係者皆さまに深甚なる感謝を申し上げ、心からの拍手を捧げます。

その後、一緒に観覧した娘と近隣のビストロへ。
先ほど観たオペラの感想を語らい、戯曲とオペラ台本の構成の違いについて話をする娘と共に食事をする日が来るなんて。成長した娘に目を細めつつ、その成長に要した時間と同じだけの歳月を重ねた、自分。すっかり年をとりました。

 

(追記)
ステージ評があったので、URLを記す。
初日
毎日クラシックナビ
朝日新聞
eぶらあぼ

千秋楽
東条碩夫のコンサート日記

 

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秋山和慶先生を悼む

1月26日に秋山和慶先生がお亡くなりになったと、27日に所属事務所から発表されました。享年84歳。
あまりの突然のことに、言葉が見つかりません。

2025年1月1日に自宅で転倒し、重度の頚椎損傷を負って入院したとの報に接したものの、2024年5月に鎖骨骨折されたときと同様に直ぐに回復されるものと信じていました。
ところが、23日に突然の引退表明。呆然として言葉もありませんでしたが、先ずは先生のご回復を心より願っていました。
引退を表明したものの、すっかり元気になったら「もう一度指揮します」と仰るのではとも……。

広島交響楽団との演奏では、特にモーツァルトの演奏の印象が強く残っています。
先生の微笑みそのままの優しい音楽。2024年12月に発売されたハイドンとモーツァルトの交響曲選集を聴いていると、あらゆるフレーズに豊かなニュアンスが溢れていて、音楽を聴く喜びにひたり、本当に幸せな気持ちになります。

あちらでは、斉藤先生、小澤さんとゆっくり音楽談義をなさっていることでしょう。そうそう、ドヴォルザークと「鉄」の話しも、楽しみですね。
どうぞ、ごゆっくりお休み下さい。

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演奏会評

WEB上のコンサート評を、あちらこちらで拝読しています。なかでも、東条碩夫氏のコンサート日記は、大変興味深く拝見しています。
他にも、note等で演奏会表を書いていらっしゃる方も多く、それぞれの経験、視点からの音楽評は非常に興味深いです。
そして、音楽の友の演奏会レビュー。演奏会の数カ月後となりますが、こうした時差も一興。

音楽の友2025年2月号、自分が大変面白く聴いた演奏と同じプログラムが「幾分冗長気味」と評されていました。はて、あの美しいベートーヴェンに心躍らなかったのだろうかと心配したり、いやいや自分が聴いたのは会場も開催日も別なので、自分が運良く素晴らしい演奏に巡り会えたのだろうと、幸運に感謝したり。

11月27日の広島交響楽団第446回定期の評がなかったのは、ちょっと残念でした。
あのマルティヌーがどのように評されるのか、拝見してみたかったです。

2024年コンサートベスト10という企画がありました。
自分が聴いたコンサートが素晴らしいコンサートとして挙げられていると、あの時の感情を共有しているような心持ちになり、なんだか嬉しい。
井上さんのショスタコーヴィチ13番、もちろん多くの人が挙げられていました。大変素晴らしい演奏でしたから、そうなりますよね。
広島交響楽団のシン・ディスカバリー・シリーズ「ふたりのヴォルフガング」は、いずれも素晴らしいコンサートでした。その中でも、コルンゴルトの「左手のためのピアノ協奏曲」は出色でしたので、こうして記事で取り上げられるのは本当に嬉しい限り。もっと多くの人に聴いて頂ければと、切に願います。

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新年のご挨拶

明けましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
今年も、気が向いたタイミングで少しずつ書くことができればと思います。

新年最初の投稿は、今気になっている作曲家の一人、マルティヌー。

マルティヌーは多くの作品を残しているものの、日本で演奏される機会は少ないように思います。交響曲はビエロフラーヴェクが1970年代から演奏していますが、その後はフルシャの登場を待たなければならなかったようです。
そんななか、2022年に広島の地でマルティヌーの交響曲を1番から4番まで演奏したことは快挙だったと、改めて実感しています。
マルティヌーが演奏されたシン・ディスカバリーシリーズでは、マルティヌー以外にドヴォルザーク、ジョン・ウィリアムズの作品も一緒に演奏されるという、下野さんらしさに溢れた素晴らしいプログラム。チューバ協奏曲をはじめとするジョン・ウィリアムズの協奏曲は、彼を映画音楽を通じてでしか知らない自分にとっては非常に興味深いものでした。

閑話休題、マルティヌーのお話しでした。

そのマルティヌーですが、まとまった書籍は日本では出版されていないという驚きの状況!国会図書館で検索してみても、一部の作品の解説記事のみ。論文があるかとも思いましたが、それもなし。
どうにかならないかとWEB内を逍遥していたら国際マルティヌー協会日本支部に行き着き、おずおずと入会についてお尋ねしたところ快諾のお返事!心から御礼を申し上げます。
後日、マルティヌーに関する日本語パンフレットをお送りいただきましたが、実に興味深いものでした。マルティヌーの生涯、作品解説が多くの写真とともに記載されていて、コンパクトながらも大変充実した内容。このパンフレットをガイドブックとして、マルティヌーの森の探索を続けたいと思います。

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2024年のコンサートを振り返って

2024年は、海外オケやオペラの公演に行くことはありませんでした。残念至極ですが、諸般の事情からやむを得ません。
今年に聴いたコンサートはいずれも素晴らしいものばかりでした。特に印象に残ったコンサートは、下記のとおりです(順不同)

大阪フィルハーモニー交響楽団、E.インバル、マーラー:交響曲第10番(フェスティバルホール)
非常に見通しがよい演奏。都響がインバルでマーラーのチクルスを始めるとのことですが、マエストロがこれだけお元気だったら大丈夫でしょう。

大阪フィルハーモニー交響楽団、井上道義、ティホミーロフ、オルフェイ・ドレンガル、ショスタコーヴィチ:交響曲第13番他(フェスティバルホール)
歴史的名演。音楽の作りはあくまでも緻密、丁寧で、荒っぽいところは皆無。それでいて、鬼気迫る迫力を備えた稀有な演奏。独唱、合唱も素晴らしい。CD化されるのはN響との録音だとは思いますが、大フィルの演奏もCD化されることを切望。

日本フィルハーモニー交響楽団、A.リープライヒ、辻彩奈、三善晃:魁響の譜、シマノフスキ:ヴァイオリン協奏曲第1番、シューマン:交響曲第3番(サントリーホール)
シマノフスキが絶美。オケ、ソロともに本当に素晴らしかった。この録音が世に出ないのは、罪ではないか。テレビマンユニオンで、再度視聴できるようにしてもらえませんでしょうか。
シューマンも、生気に溢れた名演。リープライヒ、辻彩奈という素晴らしい音楽家に出会えたことに心から感謝する。

東京都交響楽団、大野和士、ワーグナー:楽劇「トリスタンとイゾルデ」(新国立劇場)
直前での歌手の交代はあったものの、大変素晴らしい公演。演出も簡素でありながら実に美しく、ワーグナーの世界を満喫。
藤村さんのブランゲーネ、最高でした。

京都市交響楽団、鈴木雅明、ジョシュア・ブラウン、モーツァルト:歌劇「ドン・ジョヴァンニ」序曲、ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲、ドヴォルザーク:交響曲第6番(リーデンローズ)
ジョシュア・ブラウンのヴァイオリンに圧倒される。なんという美しさ。ベートーヴェンの協奏曲をこれだけ聴かせてくれるヴァイオリニストに出会ったことがない。
ドヴォルザークは熱気あふれる演奏。初めての6番の実演で、これほどまでに素晴らしい演奏に接することができるとは。
鈴木雅明さんの指揮は明確で、声部の扱いが実に巧み。

上記以外で、大いに感銘を受けたコンサートも多数(順不同)。
京響・沖澤:フレンチプログラム(リーデンローズ)
広響・下野:ブルックナー8番(HBGホール)
群響・飯森:ブルックナー9番(サントリーホール)
広響・アルミンク:アルプス交響曲(HBGホール、リーデンローズ)
広響・アルミンク:タラス・ブーリバ(プラバホール)
広響・アルミンク・アルゲリッチ:プロコフィエフPf協3(HBGホール)
広響・沼尻・安保・三界:ブルッフ二重協奏曲(フェニックスホール)
京響・井上・クニャーゼフ:ショスタコーヴィチ2番、チェロ協奏曲1番、2番(リーデンローズ)
広響・ヴェンディッティ ・服部:ショスタコーヴィチヴァイオリン協奏曲2番(HBGホール)
広響・アルミンク:マーラー2番(HBGホール)
広響・メルクル:ブルックナー9番(HBGホール)
広響・アルミンク・五十嵐:コルンゴルト左手協奏曲(アステールプラザ)
広響・アルミンク:マルティヌー6番(HBGホール)
ひろしまオペラルネサンス:プッチーニ「修道女アンジェリカ」、「ジャンニ・スキッキ」(アステールプラザ)

素晴らしい演奏を届けてくださったマエストロ、オーケストラ、ソリスト、合唱、そして演奏会の実現に奔走なさった事務局の皆様方に深甚なる感謝を。

みなさまにとって、2025年が素晴らしい年となりますように。

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第446回定期演奏会 2024年11月27日(水) 広島文化学園HBGホール

第446回定期演奏会 2024年11月27日(水) 広島文化学園HBGホール 18:45開演

指揮:クリスティアン・アルミンク
ピアノ:ゲルハルト・オピッツ
広島交響楽団

ブラームス:ピアノ協奏曲第2番変ロ長調作品83
マルティヌー:交響曲第6番 H.343「交響的幻想曲」


11月27日の広島交響楽団第446回定期演奏会、マルティヌーの名演に心奪われました。
リハーサルでマエストロが指摘していたPiu Allegroからのリズミックな箇所と、Poco Menoからの柔らかな音色の対比は素晴らしかった。
1楽章の北田さんのヴァイオリン・ソロ、完璧でした。最大限の賛辞を心から捧げます。

2楽章、ヴィオラの主題から始まりチェロが絡んだ後2ndヴァイオリンとヴィオラが内声を、1stヴァイオリンとチェロが一緒にメロディーを奏で、曲の進行とともに別のメロディーに分離していく箇所は本当に美しく、鳥肌もの。マエストロが設定した落ち着いたテンポだと、美しさが際立ちます。
トロンボーンのコラール後にpで奏でる弦のリズムも明確で、実に素晴らしかった!
アインザッツを揃えにくい箇所が頻発するので、1楽章からマエストロはそれはそれは丁寧に合図を出していました。それだけに、2楽章の某パートの飛び出しが本当に惜しかったです。本当に、些末なことですが・・・。
言い換えれば、それ以外はパーフェクト(だったと思います)。

3楽章冒頭トゥッティのコントラバスの絶妙の間合い、オケのサウンドは最高。チェロに始まる叙情的な旋律の美しさ!Poco vivo前でコントラバスがfで楔のように打ち込む力強い響き、素晴らしかったです。
ヴィオラ、チェロの大活躍は言うまでもなく、2ndヴァイオリンの内声の動きも明瞭で素晴らしかった。コントラバスも太い音でがっちりとオケを支えていて、最高でした。

フルート、オーボエ、クラリネット、ファゴットの見せ場多数で、いずれもブラヴォー。特にファゴットのソロは本当に素晴らしかったです。ブラヴィッシモ!
トランペット、ホルンは全体のサウンドに調和しながらも、アクセントとなる箇所はきっちりと決めていて全体が引き締まりました。トロンボーンのコラールの美しさ、チューバの安定感も素晴らしかったです。
マエストロの明確な棒に応え、いずれのパートも誠意を込めて演奏している様が会場に伝わってきました。
ハンガリー舞曲1番をアンコールで演奏したからか、パートごとの立礼がなかったのは少々残念でしたが、皆さん本当に素晴らしかったです。

初演者ミュンシュとボストン響の鮮烈(強烈?)な演奏は一つの極点でしょうが、多様な演奏スタイルを許容する名曲だと改めて実感。
洗練と熱気を同居させつつ粗野な響きにならないスタイルは、マエストロ・アルミンクの素晴らしさだと思いました。
4月の「タラス・ブーリバ」も素晴らしかったですし、ヤナーチェク、マルティヌーに対するマエストロの強い思いを感じました。
マエストロ在任中に、ピエロ・デッラ・フランチェスカのフレスコ画、オラトリオ「ギルガメッシュ」などを是非とも聴いてみたいです!

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シン・ディスカバリー・シリーズ 《ふたりのヴォルフガング Mozart & Korngold》 第3回

シン・ディスカバリー・シリーズ 《ふたりのヴォルフガング Mozart & Korngold》 第3回
2024年11月22日(金) 18:45開演 JMSアステールプラザ大ホール

指揮:クリスティアン・アルミンク
ピアノ:五十嵐薫子
広島交響楽団

コルンゴルト:交響組曲「ロビンフッドの冒険」
コルンゴルト:左手のためのピアノ協奏曲嬰ハ調作品17
モーツァルト:交響曲第39番変ホ長調 K.543


広響の今回のディスカバリーシリーズ、出演予定だった萩原麻未さんの体調不良によりキャンセルなさりました。これからの日々、どうぞお健やかにお過ごしください。
そして、急遽の出演をお引き受けになった五十嵐薫子さんに心からの敬意を捧げます。

「ロビンフッドの冒険」はコルンゴルトの面目躍如の佳曲。
オーケストレーションは手が込んでいながらも、一聴して分かりやすく華やかな曲に仕上げる技は、さすがコルンゴルト。
TpとHr、ブラボー!今日のメンバー表を確認すると、都響の岸上さん。
Tpは我らが金井さん。素晴らしい!

今日のマエストロの解説、実は今夜の白眉ではないでしょうか。
アンシュルス直前のウィーンを離れるきっかけとなったのが、今日の一曲目の「ロビンフッドの冒険」作曲に繋がるのエピソード。感慨深いものがありました。
次回のコンサートでのマエストロの解説も、楽しみにしています。

個人的な今夜のメインは、左手のためのピアノ協奏曲。
冒頭から複雑なリズムを正確に決めてくるピアノに脱帽です。オケとの複雑な絡みもパーフェクト。微細な楽器の使い方を目の当たりにして、なる程と納得する箇所多数。マエストロをして「選曲を後悔した」と言わしめた理由が分かりました。これは難曲です。
話しはそれますが、ヴィトゲンシュタインはラヴェルの「左手」を勝手に改編して弾いたり、プロコフィエフの4番を弾かなかったのはテクニックに難があったからと言われたりすることがありますが、この曲は気に入って弾いていたようなので、単なる「技術不足」という訳ではないのかも。余談でした。
「左手」、調を揺蕩うように推移する中間部での短いカデンツァが絶美。
コーダから畳み掛けるように終結する箇所でのオーケストラとの掛け合い、もっと響きの良いホールで聴きたかった!!
この難曲を見事に弾き切った五十嵐さんと、全力で協演した広響、マエストロに心からの拍手喝采を!!

休憩を挟んで、モーツァルトK.543。
10型。2分の2を意識したアダージョの序奏の後のホルンの素晴らしいアンサンブルに耳を惹かれます。やはりホルンが上手いとこの曲は映えますね。
微妙なニュアンスに富んだ演奏、全てのパートにブラヴォーを。

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2024.11.17(日) オーケストラ福山定期第4回 (福山リーデンローズ大ホール)

2024年11月17日(日) 16時00分開演 福山リーデンローズ大ホール

鈴木 雅明(指揮)
ジョシュア・ブラウン(ヴァイオリン)※
京都市交響楽団(管弦楽)

モーツァルト:歌劇「ドン・ジョヴァンニ」序曲
ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲ニ長調 Op.61※
ドヴォルザーク:交響曲第6番ニ長調Op.60

 

オーケストラ福山定期第4回、今日も京響は実に素晴らしかった!

ドン・ジョヴァンニでは引き締まった響きが好印象。

ベートーヴェンのVn協奏曲は、表情豊かなジョシュア・ブラウンの独奏が最高でした。
ソット・ヴォーチェのニュアンスに痺れます。ベートーヴェンの長調の素晴らしさを心から堪能。
ソロに寄り添うオケも素晴らしい。ホルン、ブラヴォー!
僕らの世代だとジョシュアといえばベルでしたが、新しい世代のブラウンの素晴らしさを銘記。今夜はこの協奏曲を聴けただけでも大満足と、前半終了。

休憩後のドヴォルザーク6番は、何と生命力溢れる名演!京響と鈴木先生の紡ぎ出す音楽に圧倒されっぱなし。こちらもホルン隊、ブラヴィー!
鈴木先生の指揮はフレーズの処理が実に明確で、多声部を実に魅力的に聴かせてくれます。これはバッハの演奏で磨き上げたものなのでしょうか。
6番の実演は初めてでしたが、こんな素晴らしい演奏に接する事ができ、本当に幸せ。

ホールの美しい響きも、今日の演奏の立役者の一人なんでしょうね。広島市に連れて帰りたい。

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