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ブリテン 歌劇「夏の夜の夢」 2025セイジ・オザワ松本フェスティバル

2025年8月24日(日)まつもと市民芸術館にて 開演15時、終演18時10分

指揮:沖澤のどか
演出・装置・衣裳:ロラン・ペリー
装置補:マッシモ・トロンカネッティ

衣裳補:ジャン=ジャック・デルモット
照明:ミシェル・ル・ボーニュ

<キャスト>    
オーベロン:ニルス・ヴァンダラー
タイターニア:シドニー・マンカソーラ
パック:フェイス・プレンダーガスト
シーシアス:ディングル・ヤンデル
ヒポリタ:クレア・プレスランド
ライサンダー:デイヴィッド・ポルティーヨ
ディミートリアス:サミュエル・デール・ジョンソン
ハーミア:ニーナ・ヴァン・エッセン
ヘレナ:ルイーズ・クメニー
ボトム:デイヴィッド・アイルランド
クインス:バーナビー・レア
フルート:グレン・カニンガム
スナッグ:パトリック・グェッティ
スナウト:アレスデア・エリオット
スターヴリング:アレックス・オッターバーン

児童合唱:OMF児童合唱団
演奏:サイトウ・キネン・オーケストラ

 

大変素晴らしい演奏に感銘を受けました。今までの音楽体験の中でも、随一。
悪文駄文の見本のようなものですが、生涯忘れ得ぬ体験をした一日の備忘録として、以下につらつらと。

非常に暑い一日。

14時開場を前に、松本城北の「やまとう」にて食事。
開店前からお客さんが並ぶとのことだったので開店前の10時55分頃に到着したものの、すでに数組の開店待ち。自分たちの番号札は6番。
11時15分頃には入店でき、おすすめの「色とりどりコース」を食す。
この日の変わりそばはケシの実入りのそば。最後のだったんそばのプリンまで、大変美味しく頂く。あまりの暑さに負けて、生ビールを一杯。

14時開場まで時間があるので、AEON松本で涼を取る。事なきを得たので、入店直後のちょっとしたハプニングも、いい思い出。当の本人は、それどころではなかったとは思いますが・・・。
店内のスターバックスで冷たいコーヒーで体を冷やそうと思うものの、炎天下で熱せられた体を冷却するには力不足。汗で濡れたハンカチを手洗いで洗って、快適性をほんの少しだけ回復させる。
店内の書店に移動し、引き続き涼を取る。近藤史恵のシャルロットシリーズを買い、犬好きの娘にその場で進呈。

AEONからは徒歩5分程度でまつもと市民芸術館に到着。
開場まで少し時間があったので、前年の写真パネルやショップの品々を見て回り、公式プログラムを1部購入、2,000円。
年輩の方が目立つ、かな。自分を含めて男性の装いは総じてラフ、女性はおしゃれだったように思う。

14時開場、1階のホワイエでワインの振る舞いがあったが、すでにビールで燃料補給済みなので自重。
ピットではコンマスの矢部さんが練習中。ピット上手側から歩いて近づくと、矢部さんと目があうが、きっと誰かと勘違いなさっていたものと思われる。ただ、せっかくの機会なのでお話させてもらっても良かったかも。とっさの判断力が劣る自分を呪う。
ピット内に多数のマイク、会場隅の目立たないところに数台のカメラ。後日、どのような形で視聴できるのか楽しみ。

1階、2階を見た後に3階の自席に到着。想像した以上にステージが近く、安堵。ピット、舞台ともによく見え、自分にとっては良席。
会場内をそぞろ歩くと、あちらこちらで音楽界の著名な方々が大勢。さすが、世界のOMF。
ピット内は、下手から上手に向かってチェレスタ、チェンバロ、ハープ(吉野さん!)、木管群、2ndヴァイオリンが客席側、1stヴァイオリンが舞台側、センター客席側にコントラバス、その手前にチェロ、ヴィオラ、ホルン、トランペット、トロンボーン、打楽器群)とピットの中ならではの配置。

開幕、舞台にはベッドとそこに眠るハーミア。森の中でストーリーが進行するわけではないらしい。
3幕最終場面ではベッドには再びハーミアが。これは、ハーミアが見たひと夏の夜の幻想なのか。

オーケストラ冒頭のグリッサンドが幻想的に、そして明瞭に聞こえてくる。個々の奏者の力とリハーサルでの準備が入念に行われた賜物か。
暗い舞台に妖精たちの幻想的な光。フォーメーションが美しく、合唱が実に素晴らしい。ソロパートも含めて、屈指の名唱では。

オーベロン、タイターニア、パックが宙を舞う。
不安定な状態でもしっかりとした声が3階席にも届くのは立派。
ニルス・ヴァンダラーの力強くも美しいカウンターテノールは、タイターニアとの対比の上でも、まさに役にうってつけ。
シドニー・マンカソーラはリリカルな美声で、このあとの場面でのコロラトゥーラも素晴らしかった。

寝間着姿のハーミアとライサンダーが登場し、二重唱。ニーナ・ヴァン・エッセンのリリカルで高低でムラのない響き、デイヴィッド・ポルティーヨの伸びやかなテノールが素晴らしい。

その後、ディミートリアスとヘレナ。サミュエル・デール・ジョンソンのよく響く美しいバリトンに驚愕。このディミートリアス役のバリトンは凄いねと 、幕間に娘とも語らう。 ヘレナ役のルイーズ・クメニーも余裕がありながらも無理ない響き。

ボトムのデイヴィッド・アイルランドは芝居も達者で、劇中「アテネでピラマスを演じられるのはボトムだけだよ」とのセリフがあるが、「松本でボトムを演じられるのはアイルランドだけだよ」と言ってもいいくらい、はまり役。
他の職人たちも、誰一人として弱いパートなし。クインス(バーナビー・レアの小芝居が光る!)はもちろん、スナグ(パトリック・グェッティの見事な最低音の響き!)に至るまで役に合った素晴らしい歌唱。実に「キャラ」が立っていて、生き生きとした場面は出色。
声部が複雑に絡み合う場面でも、難なくアンサンブルを仕上げる歌手とオーケストラに舌を巻く。これが、世界水準の演奏なのか。

人間界、妖精界によって月の色が変わり、シンプルながらも舞台装置が非常に効果的に機能。鏡の位置を巧みに移動させた演出は見事だったが、鏡を斜めに置いた3幕の職人たちの御前芝居は抱腹。会場の観客も鏡に写っていて、視線が多重的に絡み合う面白い場面。
最終盤に鏡がせり出してきて、観客が鏡に大きく映し出され、歌手たちが一斉にこちらに向かって歌い出した瞬間に、観客も物語の中で一緒に夏の夜の夢を彷徨っていたかのような不思議な感覚に。オペラを見ていた観客の眼差しと、眼指されていた舞台の視点の鮮やかな交代に、感服至極。

幕切のオーベロンとタイターニアの二重唱、目の前のテラス席で歌っている!
1階の方は、舞台では妖精たちの合唱、天上から二人の二重唱と立体的なサウンドを堪能されたのですね。
でも、自分たちは目の前でオーベロンの歌を聴けたんだもの、羨ましくなんかないもん(強がり)

矢部さんのヴァイオリンのソロは優美でミステリアス。
トランペットの高橋さんはピッコロとC管(?)を持ち替えながら、鮮やかなソロ。個人立礼があれば、真っ先に称えられて然るべき名演。
ホルンの安定したアンサンブルは本当に素晴らしかった。勝俣さんが名手なのは言わずもがな、寡聞にして存じ上げないナタリー・ブルック・ヒギンズさんは、大変な名手!己の不明を恥じ入るばかり。
新田さんのトロンボーンも、実に素晴らしいサウンド。日本のトロンボーンプレーヤーの至宝の一人だから、当たり前ではあるけれど。
無論、木管、弦楽ともにいずれも技術的に高く緻密な演奏に、心底感心する。繰り返しになるけれど、この日の演奏は世界でも屈指の高水準だったことは間違いなし。

この舞台を作り上げたのは、演出家、指揮者、歌手、合唱、オーケストラだけではなく、パック、オーベロンやタイターニアを縦横無尽に飛び回らせた舞台装置の方々の貢献も忘れてはならない。カーテンコールで黒衣に身を包んだ皆さんが拍手を受けている場面は、見ているこちらも胸が熱くなる瞬間。もちろん、それ以外にも多くの方々のご尽力あってのステージ。関係者皆さまに深甚なる感謝を申し上げ、心からの拍手を捧げます。

その後、一緒に観覧した娘と近隣のビストロへ。
先ほど観たオペラの感想を語らい、戯曲とオペラ台本の構成の違いについて話をする娘と共に食事をする日が来るなんて。成長した娘に目を細めつつ、その成長に要した時間と同じだけの歳月を重ねた、自分。すっかり年をとりました。

 

(追記)
ステージ評があったので、URLを記す。
初日
毎日クラシックナビ
朝日新聞
eぶらあぼ

千秋楽
東条碩夫のコンサート日記

 

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