指揮:アレクサンダー・リープライヒ
ヴァイオリン:辻彩奈
三善晃:魁響の譜
シマノフスキ:ヴァイオリン協奏曲第1番 op.35
シューマン:交響曲第3番《ライン》 変ホ長調 op.97
辻彩奈さんのヴァイオリン独奏、シマノフスキのヴァイオリン協奏曲第1番がプログラムに掲載されたので、2024年の東京遠征はこの日に決定。
ぶらあぼでこの日近辺のコンサートを確認してみると、23日は新国立劇場でトリスタンとイゾルデ、24日は群馬交響楽団と飯森範親さんのブルックナーの交響曲第9番。さすが、魔都東京。
往復の行程は別に記録するとして、まずは演奏会の記録から。
入谷付近の宿に22日17時過ぎに予定どおり到着して荷物を下ろし、いざサントリーホールへ。東京近辺の方の言い方だと、いざ溜池山王へというところでしょうか。
久しぶりのサントリーホール。席はお気に入りのLB、今日は8列目。
18時30分から広瀬大介先生のプレトークあり。
第1曲目の三善晃の「魁響の譜」は岡山とゆかりの曲。響きの交通整理が行き届いた指揮。明瞭なタクトは、こうした曲を演奏するオーケストラにとってもありがたいのではないか。
日フィルのニュートラルな響きが好印象。微妙なグラデーションをつけながら移ろう音の色彩に、楔のように打ち込まれる打楽器。素敵。
さあ、本日のコンサートの個人的なメインの、シマノフスキの1番。
まず、この席を押さえた自分を称えたい。
オーケストラがぼやけることなく解像しながらも、良好に響くバランスの良いサウンド。辻さんのソロもくっきりと浮かび上がって聴こえ、もう最初の一音から心を鷲掴みにされてしまい、囁くように消えゆく終曲まで、ひとときも放されず。
色彩の豊かさもさることながら、音の立体感が素晴らしい。シマノフスキの仕掛けがこんなにも明瞭に聴こえてくるとは!明確なビジョンを持った指揮者の高い技量のタクトに導かれたオーケストラと、凛とした豊かな響きの独奏ヴァイオリン。
これほど、高いレベルのシマノフスキを聴けるだなんて・・・。あまりの素晴らしさに身震いする。
この演奏が聴けただけで、この度の東京遠征は十分満足です。
・・・と思っていたら、休憩後のシューマンの交響曲第3番。生き生きと波打つように始まった第1楽章、これは素晴らしい!リープライヒは、厚い音に埋もれがちになるフレーズを浮かび上がらせ、対位的な進行を殊の外興味深く聴かせてくれる。
知的で分析力に非常に優れる指揮者と拝察。この演奏会まで名前を存じ上げなかった己を恥じ入るばかり。
遠征後、山口に戻ってリープライヒがポーランド放送交響楽団を指揮したシマノフスキとルトスワフスキのシリーズのCDを全部購入。
ヴァイオリン協奏曲第1番はツェムリンスキーの抒情交響曲とのカップリング。いずれも、名演。
追記
当日の演奏会レビューが、毎日クラシックナビに掲載されているのを発見。
https://classicnavi.jp/newsflash/post-15824/
三善、シマノフスキの好意的な評に、我が意を得たり。
辻さんのヴァイオリンに対する評は、まさに同感。
「張りと芯のある」辻さんのヴァイオリンを評して、「厚めの綿織物の中に絹糸を1本通すが如し」とは、言い得て妙なり。
違いは、シューマン。「細かい変化が盛り込まれていく」ものの、「全曲が同一のトーンに終始した」との評。
自分としては、全体的な音色の統一感を保ちながら、素晴らしく生気に溢れた立体的な演奏に大満足だっただけに、そこの評価がこの曲の演奏全体の印象を左右するのかと得心。
この評を読んでも、自分が抱いたこの日の演奏に対する印象に些かも変わりはなし。
むしろ、オケのあの音色がこの日のシューマンの良さの一つだったのになと思うものの、専門家の聴き方は参考になる。
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