芸術と生政治(アルスとビオス) 岡田 温司
今年も数えるほどしか本を読んでいませんでした。なんとも、嘆かわしい。
まだ薄らぼんやりと記憶に残っているうちに、記録にとどめておかないと。これから年末にかけて、少しずつ記事にしたいと思います。
専門家の間では共有された理解なのかもしれませんが、ミュージアムとベンサムの「パナプティコン」の間には、「見ること」と「見られること」という関係の相似性の指摘。この方面に不案内な自分にとっては大変興味深い導入でした。
その後、絵画の保存、修復を巡る「生政治」=絵画の衛生学として論は展開されます。ミュージアムに集約された絵画の修復は単なる美術の問題ではなく、「時間が絵画に与えていた重くて汚いヴェールから絵画を開放」し、「もともと有していた輝き」を取り戻すものであり、これは時間に対する勝利という、政治にとってはある種の強迫観念のようなものであるとの論の展開。
イタリアを中心とした美術に詳しい気鋭の歴史家の視点、大変興味深く拝読させていただきました。
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