マーラー 交響曲第10番(クック補筆全曲版) ハーディング/VPO
以前に買っていたけれど、じっくりと聴いていなかったダニエル・ハーディングが指揮したマーラーの交響曲第10番の全曲(クック補筆完成版)。
ラトルが指揮したボーンマスの苛烈な演奏に馴染んでいたこともあり、ハーディングとウィーンフィルの演奏には驚かされました。あれほど厳しく生と死を描いた9番の後の音楽の中に、こうした優しくも暖かな眼差しで音楽を捉えることができる指揮者がいたとは!
むろんテンポ設定は比較的似ている演奏なので、物語として音楽を捉えると一見(一聴?)似通ったものに見える(聴こえる)のですが、これ程までに違う音楽がそこに立ち上がってくるとは・・・。
1楽章のクライマックス、トーンクラスター風の強烈な音響部分であっても、他の指揮者のように音をぶつけるような威圧感はなく、聴き手を包み込むような響き。その後のトランペットのA音の持続にしても、突き刺さるような音ではなく、まるで夢の中を浮遊するよう。こうした体験は、初めてのことです。
最終楽章のチューバの音が太く、柔らかであることも、1楽章からの関連性を考えれば非常に説得力があるものでした。
ハーディングがウィーンフィルにこの音を明確に求めていたことは、アッバードやテンシュテットの指揮したウィーンフィルの響き、演奏とは大きく異なることからも明らかでしょう。
こうして、マーラーの世界を広げてくれる指揮者がまた一人増えたことを、心から喜びたいと思います。
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