大熱演でした
下松市のスターピアで開かれた、読売日本交響楽団のコンサート。
「ルスランとリュドミュラ」序曲は、落ち着いたテンポ、表情も想像していたよりは随分と穏やか・・・。
2曲目のメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲。ソリストの荻原尚子さんは、奇をてらわない丁寧な語り口。
オーケストラも、そんなヴァイオリンの音に耳を澄ましながらの伴奏。
アンコールは、初めて聴いた曲でした。
休憩をはさんで、メインプログラムのブラームスの交響曲第1番。
荘重なテンポで始まった序奏。指揮者とオーケストラの熱量が、一気に上昇。Un poco Sostenutoというよりは、Pesanteですね。
基本的には2管編成とベートーヴェンの頃とあまり変わっていないのに、この重厚なハーモニー。小林氏は音楽の高まりをテンポを細かく動かすことではなく、音の厚みを増やすことで表現され、それに応える読響の充実した響き。しっかりとしたバスに音が積み上げられているので、非常に安定感があります。提示部に入っても、遅めのテンポでじっくり。
第一楽章は、正直言って聴いていて疲れることが多いのですが、我が家の(プアな)再生装置では聴きとることができない細やかな楽器間の受渡し、ハーモニーの構成を耳にすることができ、興味深く拝聴。ヴィオラとチェロ、コントラバスの扱いが、ベートーヴェンの頃とは随分と変わっていることを実感します。ホルン、フルート等の各独奏者の高い技量も光っていました。
第二楽章の情感のこもった音楽。第三楽章の優雅さ。独奏管楽器も過度にソロイスティックになることなく、全体の中での調和が図られているようです。
そして、フィナーレ。序奏部の終わりに出てくるトロンボーンのコラールの美しいこと。
序奏が終わり、有名な第一主題。その後、音楽が展開し高まるところでも、過度にアッチェレランドすることなく、落ち着きのあるテンポ。
充実した響きは崩れることなくコーダに入り、全オーケストラによるコラールへ。ホールが分厚いハーモニーで満たされます。大熱演でした。ブラヴォー!
情熱的な指揮ぶりから小林氏を「炎のコバケン」というキャッチフレーズあるようですが、今日の演奏に接すると、その表現は少々一面的だと感じました。
このコンサートで目の当たりにしたのは、小林氏の誠実さ。
丁寧に楽譜を読み込み、自分が読み取った音楽の姿を正しく伝えようとするための、力強いタクトさばきなんですね。そこにあるものは音楽に対する深い愛情と敬意であり、一期一会であるコンサートという場で最善を尽くそうとする、プロとしての誠実さだと思います。
ブラームスの交響曲を、古典的な意匠をまとったロマンティックな音楽であることを明らかにし、音楽に込められた情念を丁寧に聴衆に伝える小林氏は、やはり稀有の存在だと実感しました。
今年の大きな災害で「魂になってしまわれた方々」への捧げものとして、アンコールで演奏された「ダニー・ボーイ」。
ホール内は静かな祈りに包まれ、終演。素晴らしいコンサートでした。
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コメント
コンサート素晴らしかったですね。
機会あってリハーサルも拝見させて頂いたのですが
言葉にならないくらい感動でした。
小林研一郎さんも団員の皆さんも下松は最高の演奏が
できたとおっしゃていたそうです。
とっても幸せなひとときでした。
投稿: misa | 2011年12月11日 (日) 09時59分
>misa さん
リハーサルからお聴きになったとは!
貴重な素晴らしい体験でしたね。
ブラームスに相応しい、読響の厚い響きに感銘を受けました。
今後、年に一度でもいいので、下松での公演が定期化されたらと思いました。
下松市文化振興財団さんで、ご検討いただければよいのですが・・・。
投稿: Mario | 2011年12月13日 (火) 18時48分