慈しみの女神たち
LietzMinolta CL Super-Wide-Heliar15mm 400VC
20世紀の「オレスティア」。あまりにも、20世紀的な。
自己の存在の正当性を証明するために、特定の他者の存在を否定するという理論の実践装置として、複雑かつ高度に組織化された暴力。トロイア戦争におけるアカイアの将軍も、その凄惨さに言葉をなくすであろう20世紀前半のヨーロッパが、この小説の舞台。
父親に失踪宣告という法的な死を与えた母はアガメムノンを殺害したクリュタイムネストラであり、母の再婚相手である義父はアイギストス。
アウエは、義父を殺害し、ついで母を手にかけたのだろう。アウエを追跡する刑事が再現したとおり、オレステスと同じ手順で。
アイスキュロスの悲劇では、アテナの裁きによって赦されたオレステス。20世紀のオレステスにとってのアテナは明示されないまま、物語は断ち切られる。
久しぶりに、読書で消耗しました。(2段組、上下巻合計で約1000ページという物量的意味だけではなくて。)たまには、こうした本も読まないと。
WEB上の興味深い書評は、こちら。
http://d.hatena.ne.jp/nakaii/20110712/1310448519
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